学怖荘の人々
第2話「運命の時」

   ・・・もうすぐ僕の運命が決まる。結果次第では生きていないかも知れない。
   僕は不安でたまらない。
   もし、この世に神様か仏様が存在するのなら、まさにすがりたい一心だ。
   この先、僕の運命は・・・・・・?
   ・・・その時、突然芹香さんが占いを止めてしまった。
   一体何が起こったというのだ?まさか、あまりにも結果が悪いのか・・・?
   それとも、占いをするまでも無いということか・・・?
   すると芹香さんは・・・・・・
芹香「坂上君、私が占いを途中でやめた理由がわかるかしら?」
   僕にこう切りかえしてきた。僕は正直に心中を答えた。
坂上「・・・占うまでもないくらい、結果がひどいんですか?」
   ・・・みんなの表情は緊迫している。そして、新堂さんがこう言った。
新堂「決まりだな・・・。さあ、どうしてくれようか?」
   新堂さんが冷酷にいい放つ・・・。その時、芹香さんが割って入ってきた。
芹香「結論はまだ早いわ。」
新堂「えっ!? 違うんですか・・・?」
   新堂さんが残念そうな顔をしている・・・。
荒井「まあまあみなさん。ここはひとつ先輩に任せましょう・・・」
   一同は荒井さんの意見に賛成のようだ。とりあえず命拾いしたのかな・・・?

芹香「坂上君、あなた『結果がひどいのか』って聞いたわよね?
   そのことは、まだわからないわ・・・。
   でも坂上君。自分の運命とは自分で切り開くものよ。
   私の占いでどうこうするよりも、あなたの力でみんなに認めさせないとダメな
   のよ・・・。その方がいいと思わない・・・?」
   芹香さんの意見はもっともだった。僕は占いの結果に甘えようとしていたのだ。
   僕はみんなに頭を下げた・・・。
坂上「お願いします!! 僕をここの管理人として認めてください!!」
   みんな仕方がない・・・、という顔つきでいる。
風間「まあ、君がそこまで言うのなら・・・。僕は紳士だからそこまで頼む君を無視する
   ことは出来ないからね・・・」
荒井「いいんじゃないですか?」
細田「流石は芹香先輩だな〜。いいこと言うよ。」
   ・・・口々に、僕を一応認めるようなことを言っている・・・。
   しかし、新堂さんと岩下さんの二人は気に入らないという顔をしている。
新堂「ちっ! 付き合ってらんねえぜ!!」
   新堂さんは不快そうに部屋を出て行ってしまった。
岩下「・・・勝手にすれば・・・」
   そう言い残し、岩下さんも去って行った。

日野「まあ、とりあえず様子を見よう。何か問題があればその時に対処すればいいだろ
   う・・・」
荒井「坂上君のお手並み拝見。と、いうことですね・・・」
   ・・・と、その時芹香さんは顔を覆っていたヴェールを取り払った・・・
芹香「坂上君、これからよ・・・。あなたの真価が問われるのは・・・」
坂上「・・・!?」
   僕は芹香さんの顔を見て驚いた。彼女の容貌はとても優美で、あの岩下さんをも
   超えている・・・。みんなが騒ぐのも無理はない・・・。
風間「・・・いつ見てもお美しい・・・」
細田「確かに・・・」
日野「何だ、坂上? お前も惚れたのか? ひゃっはっはっはっ・・・」
坂上「ちっ、違いますよ! 何を言ってるんですか!?」
   ・・・あの顔を見れば一目ぼれをしてしまってもおかしくはない・・・。
   しかし、唯一荒井さんだけが興味なさそうな顔をしている。

芹香「坂上君。改めて自己紹介をするわね・・・。私の名は『御子柴 芹香』。○○大学
   の4年よ・・・」
   ・・・姉さんより年下だったのか・・・。雰囲気からてっきり姉さんより年上だと・・・。
   そしてそれに続き、続々と自己紹介をしてくれた。
風間「僕の名は『風間 望』△△大学に通うナイスガイの3年だ。」
   ・・・風間さんは自慢げに言うが、周りの目は『またか・・・』という目で見ている。
福沢「私の名前は『福沢 玲子』よろしくね〜坂上君。ほら、早苗ちゃんもしなよ。」
元木「うん。玲子ちゃん。」
   さっきの女の子達だ・・・。早苗ちゃんと呼ばれる女の子が僕をジロジロ見てくる。
元木「・・・やっぱりだわ・・・」
坂上「えっ!?」
   彼女がつぶやいた言葉に僕は少し驚いた。いったい何なのだろう・・・?
元木「あっ、何でもないの。気にしないで・・・。私の名前は『元木 早苗』○○大学の
   1年。芹香先輩と同じ学校なの・・・」
坂上「はあ・・・。」
   ・・・いったい何がやっぱりなんだろうか?気になる・・・。
   そして、続いて・・・
日野「俺の名は『日野 貞夫』だ。よろしくな、坂上!」
坂上「はい、こちらこそ・・・」
田口「私の名前は『田口 真由美』よろしくね、坂上さん。」
坂上「どうも、ご丁寧に・・・」
細田「いやあ〜嬉しいな〜。君のような人が管理人で・・・。僕の名前は『細田 友晴』。
   よろしく頼むよ、坂上君!」
坂上「はっ、はい・・・。こちらこそ・・・」
細田「いやあ〜、僕たちはいい友達になれそうだ・・・」
   ・・・この人は何を言ってるんだろうか? 
   さあ、いよいよ最後の人だ・・・。
荒井「・・・僕の名前は『荒井 昭二』。あなたを歓迎しますよ。坂上君・・・」
坂上「そりゃどうも・・・。こちらこそどうぞよろしくお願いします・・・」
細田「あっ、坂上君! さっき去って行った二人も紹介しておくよ。
   『岩下 明美』さんと『新堂 誠』さんだよ・・・」
坂上「どうもありがとうございます。」
   ・・・僕もやはり自己紹介をしておくべきだろう・・・。
坂上「改めて僕からも自己紹介をさせていただきます。僕は『坂上 修一』といいます。
   今度こちらの管理人をさせていただくことになりました。
   いたらない点もあると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。」
   ・・・てな具合で顔合わせは終了した。
   そして・・・
日野「おい、真由美。坂上を管理人室に案内してやれ。」
田口「わかったわ。さあ、行きましょう坂上さん・・・」
坂上「はい、お願いします・・・」
   こうして、田口さんに部屋に案内してもらうことになった。

田口「ねえ、坂上さん。ひとつ聞いてもいい?」
坂上「えっ、何をだい?」
田口「坂上さんって、今、付き合っている人いるの?」
坂上「なっ、何だい急に!?」
   僕は、突然の質問に気が動転してしまった。
田口「ねえ、いるの、いないの?」
坂上「別に今はいないけど・・・」
   と、正直に答えた。
田口「じゃあ昔はいたんだ・・・」
坂上「えっ、君だってさっき・・・」
   先ほどの日野さんと田口さんのやりとりから、二人は普通の関係ではないと
   確信していた。
田口「ああ・・・。あれね、私のお兄ちゃんなの。離婚して名字が変わったの・・・」
坂上「あっ! ごめん・・・」
   ・・・悪いことを聞いてしまった。まさか兄妹だったとは・・・
田口「別にいいよ。全然気にしてないから・・・」
   そう言ってくれてはいるが、彼女はちょっと寂しそうな表情を見せていた・・・
   それを切り返すように僕に話を続けた・・・
田口「昔ってことはフリーなんだ今・・・」
坂上「まあそうだけど・・・」
田口「どんな人だったの?」
坂上「そうだなあ・・・」
   僕は思い出していた・・・。あの時のことを・・・。
坂上「・・・・・・」
田口「坂上さん・・・?」
   どうしたんだろう・・・。なぜ坂上さんは涙を・・・。よほどつらいことが?
坂上「んっ!? ああ、ごめん・・・。ちょっとね・・・」
   ふと落ちた涙・・・。僕は・・・僕は・・・・・・
坂上「・・・まあ、付き合っていたというより憧れかもね・・・」
   ・・・私には、坂上さんが妙に明るく振舞った態度が余計に気になっていた。
   過去に何かあったのだろう、きっと・・・。
田口「私の方こそ・・・。嫌なことを思い出させてしまってごめんなさい・・・」
坂上「あっ!? 大丈夫だよ。気にしてないから・・・。僕の方こそ涙なんか・・・。
   男のクセにね・・・」
   ・・・精一杯強がって見せる坂上さんがとても意地らしく見えていた。
   そうこうしているうちに、管理人室についた・・・

田口「・・・さあ、坂上さん。ここが管理人室です。」
坂上「ここかあ・・・。田口さんどうもありがとう。」
田口「いえ・・・。私の方こそ変なことを・・・」
坂上「いや、それはお互い様だよ・・・」
田口「私は何とも思ってませんから・・・」
坂上「・・・ごめんね。嫌な思いさせちゃって。それじゃあ・・・」
   僕は、これ以上会ったばかりの人に嫌な思いはさせたくなかった。
   なぜなら、これは僕が背負わなくちゃいけない運命なのだから・・・


               −別室にて−

荒井「・・・芹香先輩、僕にはわかってますよ。あの占いの結果が・・・」
芹香「それは・・・」
   荒井君が珍しく私の部屋に訪ねてきたと思ったら、まさかあの占いのこととは思
   ってもみなかった・・・。
荒井「本当は悪かったんじゃないですか・・・?」
芹香「・・・・・・」
   荒井君の言う通りだった・・・。結果としては悪いかもしれない・・・。
   でも、彼のもたらすことは禍だけではないと出ていた・・・。
   実際、どちらとも言い難い結果であった・・・。
荒井「やはりそうなんですね・・・」
芹香「・・・荒井君にはかなわないわね〜。確かに結果としては良いとは言い難かったわ。
   でも、私には彼から強い何かを感じた・・・」
荒井「・・・わかってますよ。僕も彼ならここの邪悪な何かを拭い去ってくれそうな気が
   したんです・・・」
   と、その時・・・
  『ゴトッ・・・』
芹香「だっ、誰なの? そこにいるのは・・・」
荒井「今の話、聞かれてしまいましたかね・・・」

   ・・・そこにいたのはいったい何者なのか? 
   果たして、今後の坂上の運命はどうなるのだろうか?

   『ギィーッ・・・』
芹香「・・・あなたは・・・」


                              第3話につづく・・・



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