【月光症候群】


−月の光に魅せられて、人の心は狂気に満ちる−

今夜も人間狩りが行われていた。
坂上が殺人クラブの部長を日野から奪ったのは・・・1年前。
もともと人心掌握の才能があったのか、あれからメンバーは大幅に増えた。
日野の時より3倍の20人以上になっている。

「坂上君、今日は獲物にまだ会えないねぇ」
「その薄汚い笑いは止めろ。お前は生徒から毛嫌いされてるぞ」

平然と傍らにいた教師、黒木を叱り付けた。今の殺人クラブはメンバー数を
考え、5〜10人の獲物を一度に暗闇の学校に放つ。・・・毒は飲ませない。
二つある校門には、それぞれ見張りを数人立てる余裕までできたのだから。
また、獲物の方にも包丁・ノコギリ・カッターなどに加え、鉄亜鈴などの武
器になり得る物を、あらかじめ持たせてやる。これは坂上独自のルールだ。

「お前とコンビになったのは、ある意味で幸運だな。ミスしたらすぐにあの
 世へ送ってやる」

殺人クラブメンバーにクジを引かせ、毎回必ず二人で行動させるのは、日野
の失敗を繰り返さないように考えたものだった。狩りに失敗し逃げられた者
は、一緒に行動していた仲間にその場で襲われる仕組みになり、予定以上の
死者が出た事も度々ある。
満月の夜に豹変する黒木を殺すのは、今の坂上に迷いなどカケラも無い。

「あぁ、こんちくしょー!」

突然、黒木が走り出した。坂上が冷静に遠くを見ると、うつぶせに倒れてい
る人影があった。
獲物か?それともメンバーというだけのただの他人か?

「俺が狙ってるヤツだったのにー!ちくしょう!!」

黒木は膝をつき悔しがっていた。死体は背中に包丁が突き刺さった、獲物の
女子生徒だった。もう息はしていない。
そして女子生徒の横には・・・メンバーの3年男子が倒れていた。頭から出血
している。
こちらはまだ微かに息はあるが、苦しそうに手を伸ばして坂上の足を掴む。

「この女はお前が殺ったのか?」
「・・・・・・ぅっ・・・刺す瞬間に、殴られ・・・た、助け・・・ぇ」
「能無しめ」

坂上は空いてる足で顔を踏みつけた。
暗黒の夜は果てる事なく続いていく・・・。



※タイトル・冒頭文は、ヒューマン製作の【ムーンライトシンドローム】より


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