01:12
僕は急いで旧校舎に行ったが、大きなミスをしてしまった。
…明かりがない…旧校舎は古いし、月明かりが当たらない場所もある。
明かりを手にいれないと…タイムロスは惜しいが、引き返して明かりを探そう
…と、廊下を歩いていたら彼女がいた。

01:06
宿直室の前に一瞬だが立っていた。
宿直室!
なんで大事なことに気付かなかったのだろう。あそこには泊り込みの先生がいる
はずだ。事情を話せばなんとかしてくれるだろう。
中からは人の気配がする…誰がいるのだろう。先生でいてくれますように…。
宿直室は鍵がかかっていた。鍵がかかっているということは、先生はもうそこに
はいないということなのだろうか…。それでもいい、開けて待ってみよう。
僕は鍵束を使って部屋を開け、中に入る。
意外なことに、中には宿直の先生がいた。座布団に座ってテレビを見ている。
それにしては様子がおかしい。部屋に入ったのに振り向きもしないなんて…
とりあえず周りを見てみよう。と、その時!急に先生が僕のいる方向へ倒れた。
そして驚いたことに、先生の喉は切り裂かれていた!…死んでいる。
部屋にはカギが掛かっていた…という事は、部屋の中には先生を殺した犯人が!
僕は身構え、犯人を探すため周囲を見回す……何かが光るのに気付いた。

「死ねーーーーっ!!!」
何者かが僕に向かってきた。
間一髪でそいつを避ける。その時、一瞬だが銀色に光るモノが頬をかすめた。
手で触ると、生暖かい感触が…血だ!
「良くかわしたじゃねえか。褒めてやるよ」
そこには、新堂がいた。奴は手にナイフを持っている。
「お前が先生を殺したのか?」
 「そうさ。邪魔だったからな」
僕はドライバーをポケットから出し、新堂の方へ向けて構えた。
新堂は、僕のドライバーを見ると鼻で笑った。
 「物騒なもの持ってんじゃねえか。俺とやり合おうってのか?」
新堂はナイフを持ち直した。
ドライバーとナイフ。果たして僕に勝算はあるのだろうか。

「やめて…新堂さん…やめて!」
彼女の声だ。
僕はとっさにあたりを見回した。彼女は、僕を守るようにして立っている。
「恵美…その声は恵美か!」
彼女の声に新堂は動揺している。
…エミ?それが彼女の名前か、彼女はエミと言うのか。
彼女は新堂を知っているのだろうか…。そして新堂は、彼女の何なのだろうか。
新堂は僕への攻撃をやめると辺りを見回している。
「…お願い新堂さん…もうこんな事やめて…彼は何の関係もないでしょう…」
彼女は泣いている。
「なんでお前が坂上を庇うんだよ。コイツは…お前には関係ないだろっ!」
おそらく新堂は彼女に向かって言っているのだろうが、新堂には彼女が見えない
のだろうか?彼女と正反対の方向を見て話している。
彼女はゆっくり新堂に向き直ると静かに話した。
「…確かに関係ないわ…でもこれ以上あなたが血で染まっていくのを見たくな
 いの!お願い…もう私の事は忘れて…」
「じゃあ、姿を見せてくれよ…。いったいどこにいるんだよ…。俺は一生懸命
 探しているのに…忘れてくれなんてひどいじゃねーか…」
新堂は、もう彼女しか眼中にないのだろうか。殺意が消えている。

「…お願い…彼を…新堂さんを止めて…」
彼女は泣きながら小声で僕に言った。
新堂は、彼女に対してとても動揺している。今がチャンスかもしれない。
その瞬間を狙って、僕はドライバーを投げた。
奴は気持ちをすぐに切り替えて、素早くよける。
僕は、頭から突っ込んで行った。
新堂は後ろの方へ倒れ、すかさず僕はそれに馬乗りになる。
そして、奴の手からナイフを奪い取った。
まさか、ここまで手際良く進むとは思わなかった。
僕は運がいいのか悪いのか。
それから僕は、新堂を縄で縛るとさっきの声の主『エミ』の事を聞いた。
新堂はしばらく黙っていたが、こう答えた。

『エミ』とは新堂の恋人だという事、
ずっと前に旧校舎で亡くなって、それからしばらくは旧校舎の鏡に現れた事、
新堂はよく授業をサボって彼女に会いに行ってた事、
ある日を境に、彼女は鏡から…新堂の前から姿を消した事などを聞いた。
非常に残念だ…
彼女はもうこの世界の人間ではない…会うこともお礼を言うこともできない。
彼女は僕の方を見ると哀しそうに微笑んだ。
次に、何で殺人クラブに入ったのかという事を聞いた。
新堂は一呼吸置くと話し始めた。
「噂でな、血にまみれて旧校舎の鏡の前に立つと向こうの世界にいけるんだと。
 だから俺は殺人クラブに入ったんだ。恵美のいない世界なんて生きていても
 意味がないってな」

それだけ聞くと、僕は彼女に新堂をまかせてゆっくりと部屋の中を探索した。
新堂は相変わらず目だけを頼りに彼女を探している。
部屋の中にアンプルは無かったが、懐中電灯を見つけることができた。
これがあれば旧校舎に行ける。だが、旧校舎にも誰かいるかもしれない。
もしかしたら日野がいる可能性だってある。
移動中と、誰かがいそうな教室の中では、点けるのを控えよう。
僕は彼女の方を向いた。…彼女は…新堂の傍で声もださずに泣いている。
お互いとっても大事な恋人だったのだろう。
だから彼女は、僕に新堂を止めて欲しかったのかもしれない。
僕は、彼女に心で大丈夫だと言うと宿直室を後にする。
目指すはただひとつ、旧校舎。


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