夏雪
昨日のことについて日野先輩と話していた。 「風間さんの話は違う意味で怖い話でしたよ。どうまとめようかとても  迷います」 日野先輩は首を傾げるとこういった。 「風間って誰だ?俺は知らないし、呼んでもいないぞ」 その言葉を聞いて、すぐピンときた。 「また、からかおうとしてますね。もう僕は騙されませんよ」 やや微笑みながら答えた。 「いや、本当に・・・」 深刻な顔で見つめ返された・・・・・・。 すると、部室のドアを叩く音がした。 「おーい。開けてくれよ」 風間さんの声だ! 自分で開ければいいのに・・・。 しぶしぶ僕はドアを開けた。 ドアが開くと、すぐ側にある椅子に風間さんは座った。 「では日野先輩。ここに座っているのは、一体どなたなんですか?」 風間さんの座った席を指差しながら、僕は苦笑した。 「誰も座ってないじゃないか・・・。昨日の会合で、たて続けに怖い話を  聞いたから疲れているんだな・・・。あとの事はいいから、今日は早く  帰って休め」 「え?」 驚いて振り向くが、風間さんはニコニコしながらこちらを見ている。 もしかして僕にしか見えないのか? 風間さんは立ち上がると、日野先輩のバックから5000円札を抜き取り、 ドアの方に掛けよって僕に手招きをしてきた。 「そ、それでは、お言葉に甘えて先に失礼します・・・」 一礼すると、僕は部室を後にした。 風間さんは嬉しそうに5000円札を見つめながら歩いていた。 (あぁ、日野先輩のなんだよな・・・) 「驚かせてしまったね。いや〜実に愉快だ!ここが気にいったから、  しばらく居させてもらうことにするよ」 「あの・・・風間さんは一体何者なんですか?」 たとえ風間さんが幽霊だとしても、怖くはないだろう。 「知りたいかい?知りたいなら10000円で教えてやろう」 僕は諦め、家に帰ることにした。 しばらく風間さんとのスリルな生活が続いた。 どうスリルかは、想像してくれればわかると思う。 ・ ・ ・ 「いよいよ明日だね」 そういうと、ある日、風間さんはいなくなってしまった。 ・・・明日といえば・・・・・・旧校舎の取り壊しをする日だ!? 僕は、夜にも関わらず学校へ向かった。 このまま風間さんに会えなくなるような気がして・・・。 急いで旧校舎まで走った。 「何だ。まだ僕に用があるのか?」 風間さんは"仕方ない"という顔をしながら近づいてきた。 僕が喋ろうとすると、同時に風間さんが言った。 「まぁ、今まで楽しかったから、ひとつ面白いことをしてやろうか」 風間さんは溜め息をつくと両手を広げた。 「いや、君は本当に愉快な奴だった」 空を見上げ風間さんは呟いた。


















雪が降ってくる。 舞いながらゆっくりと。 「風間さんありがとう」 夏雪はとてもきれいだった。
その頃、旧校舎の屋根の上では・・・

「いい加減、雪を降らすのはいいだろ!?…ったく、
 何で俺が、お前のためにこんなことをしなきゃ
 なんねーんだ」

「まあまあ新堂、そう怒るなって。最後の記念だよ」



「おい!成仏する前に、あのときの5000円を返せ…」

「さすがは日野。ちゃんと見えていたんだね☆」


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