僕の話は、トイレの話だよ。まぁ、予想はついてたと思うけど。
僕の体験談なんだ・・・。じゃあ、話すよ。
修学旅行に行った時のことさ。
夜中、僕はトイレに行きたくなってね。
廊下に出て、トイレまでの道のりを歩いた。
そこって、「旅館」でさ、夜中は特に不気味だった。
ちょっとも先が見えない闇。そして、廊下の軋む音。
僕は早足になって、トイレに行ったんだ。
トイレの中は明るくてね、正直ほっとしたよ。
一番奥のトイレが閉まってたから、誰かいるようだったしね。
用を足したあと、僕は不思議なことに気付いたんだ。
奥のトイレに、人が入ってるって気がしないんだよ。
閉まってて、鍵もかかってたけど、音がまったくしないんだ。
衣擦れの音とか聞こえてもおかしくないだろ?
それで、僕はドアをノックしてみた。
ノックが返ってきた。
それで、あぁ、やっぱり入ってるんだなって思った。
その時に、何か「キィ、キィ」って音がした。
まるで、何かが軋むような音だった。
同時に、「ドン」というドアを叩く音。
どうしたのかな、と思ったけど、ちゃんとノックが返ってきたから、大丈夫と
思って。
僕はそのまま帰って、眠りについた。
次の日、なんか騒々しくて目が覚めた。トイレで何かあったっていうんだ。
僕は行ってみてびっくりしたよ。
なんと、昨日の奥のトイレで、人が首を吊ってたんだ。
どうやら、昨日の夜に死んだらしい。
そこで僕は恐くなった。もしかして、あの軋むような音はロープの音で、
「ドン」という音は、体がドアにぶつかった音。
そしてノックは、僕がドアを叩いた反動で跳ねた、足がぶつかる音だったりし
て・・・。
みんなもさ、もしこんな音がしてたら、誰かに伝えた方が良いよ。
もしかして、誰か死んでるかもしれないから・・・。

「さて、僕の話は終わりだ。次は誰が話してくれるのかな?」

細田さんが火を吹き消した。
残りは、3本。
「次は私ね。いい?」
福沢さんが、可愛らしい笑顔を向けて言った。



ねぇ、みんなは、部活って行くでしょ?
坂上君も、やってるよね?まぁ、岩下先輩とか新堂先輩は有名じゃないかな。
私は、今はやってないんだけど・・・。
それでね、私が話すのは、ある部室の話よ。うん、運動部の。
私が見たことなんだぁ。ちゃんと聞いてよね。
あのね、私、その部室に忍び込んだことがあるの。
なんでかって?えへへ、実は、ある先輩にプレゼント渡そうと思って。
そうねぇ、案外この中にいるかも・・・なんてね。
でも、直接渡すのは恥ずかしいから、部室に置いてこうって思ったのね。
だから、こっそり部室の中に入ったの。
部室の中は、電気がついてないのか暗くてね。私はまず、電気のスイッチを探し
たわ。
電気のスイッチはすぐ見つかった。私は迷わずスイッチを入れた。
そしたらとたんにね、右から2番目のロッカーが揺れ出したんだよ。信じられな
いよね。
私、すっごく恐かったけど、その時は先輩にプレゼントを置いてくことで頭が
いっぱいで。
それで、部室の机の上に、手紙付きのプレゼントをそっと置いた。
ロッカーのがたがたは、まだとまらない。今度は私、そっちが気になっちゃっ
て。
よせばいいのに、ロッカーにそっと手をかけてみたの。
「熱っ!」
私はびっくりして手を離したわ。そのロッカー、すっごく熱かったのよ。
まるで、ロッカーを燃やしてるみたいだった。そしたらね、その中から、何か聞
こえるの。
「カリ・・カリ・・・」っていう、ロッカーをひっかく音。
それから、「たすけて」って聞こえるのよ。
私、びっくりしちゃってね。そこから逃げ出したの。
あとでそのロッカーをもう一度見に行ったんだけどね、何もなってなかった。
あとで聞いたんだけど、そこって、ずっと前に焼死した男の子が使っていたロッ
カーだったの。
その男の子は虐められて焼却炉に入れられて、それに気付かずに、用務員さんが
火をつけてしまって殺しちゃったんだって・・・。
きっとその子が、助けを求めてたんじゃないかなぁ。
火の海の中で、生きながらにして燃やされた男の子が、焼却炉の厚い蓋に阻まれ
て外に伝えられなかった言葉。それが、「たすけて」だったんだと思う。
・・・あ、関係ないけどそのプレゼントってね、青と白のボーダーのタオルだった
んだ。
だから、もしボーダーのタオルを持ってる先輩がいたら気を付けてね。
そのロッカーをあけちゃったら、どうなるかわかんないから。

「私の話はこれでおしまい。次は誰かなぁ?」

福沢さんが火を吹き消した。
ロウソクは、あと2本。
余談だが福沢さんの話が終わった時、ある先輩が「まさか・・・」と呟いた。
誰が呟いたかは、言わないけどね。
「僕が、次の話をしましょう・・・」
荒井さんが、呟いた。



さて、みなさんは、写真を撮ったことありますよね?
もちろん、僕もありますよ。
これは、そんな写真の話です。・・・しかも、僕が撮ってしまったんですよ。
心霊写真をね。
そこは、旧校舎の前でした。なぜ、そんなところで撮ったかって?
さぁ・・・とにかく、友達がここで撮ろう、と言うから僕はカメラを構えました。
その場にいた3人の友達が、ならんでピースをしました。そこまでは普通の
写真だったんです。
ところが・・・
現像した写真を見て、僕は目を疑いました。それが心霊写真だったんです。
三人の、目から上、腰から下が、綺麗に消えていたんです。
顔の一部と上半身だけが浮かんでいるような、気味の悪い写真。
ええ、本当に。後ろの旧校舎が見えていたんです。
僕は、それを言い出せませんでした。
「手違いで捨ててしまった」と言って、ごまかしたんです。
それから、変なことが起きはじめました。
その写真に写っていた生徒全員が、足を怪我したんですよ。それも、まったく同
じところに。
僕は、恐くなったんです。その写真のせいじゃないかって。
でも、偶然だって思うことにしたんです。
友達にだって、その写真を見せてませんでしたからね。
幸い、その怪我も重くはならず、すぐに治りましたし。
それで済むと思ってたんですよ。ところが、今度はどうなったと思います?
その友達全員、死んでしまったんです。
一トントラックに、頭を潰されて即死だったそうです。
おかしいじゃないですか。三人ともが、同じ死因だったんです。
しかも、なんで潰されたのかはわからない。でも、僕はその死体を見た時に納得
しました。
目から上が潰されていました。それから、腰から下も無くなってたんです。
あの写真と同じように・・・・。
もし、みなさんにもそういう写真を撮られた記憶があったら、気を付けて下さ
い。
もしかして、こうなってしまうかもしれませんよ・・・。

「さぁ、僕の話は終わりました。次がいよいよ最後ですね・・・」

荒井さんが、火を吹き消した。
ロウソクは、あと1本。
「じゃあ・・・最後は僕、ですね」
僕は、みんなを見渡したあとに言った。
今回は、僕が七人目、というわけか。




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