■ ちょぴっと説明させていただきます ■
   このお話は基本的に、下へスクロールして読み進めてください。
   ところどころリンクが貼ってありますが、すべて、ページ内の移動です。
   ブラウザの戻るを使うと、分岐地点に戻れます。

 

岩下さんちを訪問 



「あなた、岩下さんと親しいんですって?」

担任の先生のひとことで、わたしは放課後、岩下さんちへ行くことになった。もう三日も休んでいる彼女に、プリントを届けてほしいと、頼まれたのだ。

岩下さんの家は、わたしの家から、さほど遠くないところにあったが、もちろん行くのは、はじめてだ。

住所をたずね当てて行くと、人気のない住宅街に、一軒だけ特に古めかしい造りの家屋があった。
まるで・・・、昭和初期にでも、建てられたような。

(あれかな・・・?)

果たして表札を見ると、『岩下』となっていた。確かとても古い家だと、聞いたことがあったのだ。それにしても・・・、大きな家だ。

インターホンがなかったので、わたしは「すみませーん」と声をかけてみた。

すると、中から岩下さん本人の返事がして、(・・・病気じゃなかったのかしら・・・) 黒いツーピースを着て、大人びた雰囲気を漂わせた彼女が玄関にあらわれた。

「あら・・・?」

少し不思議そうに首をかしげる岩下さんに、わたしはカバンから、プリントを出して渡した。

「これ、先生に頼まれて・・・」

「まあ。わざわざ、ありがとう。・・・どうぞ、上がって、お茶でも飲んでいって」

わたしは断るのもなんだと思い、中へ入った。

「今、お茶をいれてくるわね」

わたしが通されたのは、広広とした和室だった。全体的になんとも古くさく、薄暗い部屋なのだが、とても静かだ。わたしは、きょろきょろと、室内を見まわした。

(岩下さんて、こういう家に住んでいるのねぇ。彼女の落ち着いた雰囲気に、ぴったりだわ。それとも、こういう家に住んでいるから、ああいうふうになるのかしら・・・)

やがて、カップを二つお盆に載せて、岩下さんが戻ってきた。

「・・・どうぞ。いただきものの、お茶だけど」

「あ、ありがとう」

すすめられるままに、お茶を手に取る。と、なんだかすごいにおいがした。

青臭くて・・・、なんだか変わったお茶だ。色もすごい。お茶の葉が、カップの中でとぐろを巻いている。

(な、なんのお茶かしら)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

@飲む  A飲まない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飲む

せっかくいれてくれたものを、飲まないなんて、悪いよね。

わたしは息をとめて、ひとくち飲んでみた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ま、まずいっ! なんなの、これ!?

「・・・あら。お口に合わなかったかしら? このお茶、例の七不思議の会のときに、二年の男子が持ってきてくれたものなんだけど」

「そ、そうなんだ。でもちょっと苦いね・・・」

わたしはもう口の中の苦さに、まともに話もできなくなり、早々に、岩下さんちを辞した・・・。

それ以来。なんだかわたしは、トイレに行く回数が減ったように思う。以前はトイレがとても近かったので・・・、助かっているけど。

これは、あのお茶の効能なのかしら。

今度岩下さんに、その二年の男子の名前を聞いてみよう。(終)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飲まない

とてもじゃないけど、飲めないわ。

もともとわたしは、においの強いものが苦手だし・・・。

わたしはカップを受け皿に戻し、岩下さんを見た。

岩下さんも、じっとわたしを見ている。

「・・・どうしたの。飲まないの?」

「え。えーと・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

@飲む  A飲まない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飲まない

やっぱり、ムリだわ。

とても、こんなもの飲めない・・・。

わたしは、もじもじとしながら、適当にその辺に視線を泳がせた。

そんな眼の端でとらえると、岩下さんは、背筋が冷たくなるような、例の微笑を浮かべている。

どうしよう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

どうしよう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

どうしよう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

わたしが心臓をバクバクさせていると、

「そうね。ちょっとクセのあるお茶だから、飲みにくいかもしれないわね。飲みなれればおいしいんだけど。・・・それじゃあ、何か別のものをお持ちするわ」

そう言って、岩下さんは、部屋を出ていった。

わたしは、ほっとして、全身の力が抜けた。

静かなときが流れた。ほんと、街の喧騒とは無縁な場所なんだなぁ。

わたしは、ぼんやりと壁の時計や、窓から見える緑なんかを眺めていた。

すると不意に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごとっ。

押入れの中から、何か物音がしたのだ。

わたしはドキリとした。

(な、なんだろ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

@押入れを開けてみる  A開けない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

押入れを開けてみる

岩下さんが、戻ってくるような気配はまだない。

なんだか・・・、胸騒ぎがする。

ちょっと、ちょっとだけ、開けてみようか・・・。

ちょっとだけ・・・・。確かめるだけ・・・。

わたしは、押入れの前に行くと、少しためらったけど、思いきって戸を開けてみた。

すると、そこには・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・思いがけないものがあった。

「し、しん・・・?」

そのとき、わたしの後頭部に、何か重いものが打ちつけられたのだった。

そして、急速に、目の前が暗くなって行った。(終)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開けない

人様の家の押入れなんて、開けられないわ。とても、気になるけど・・・。

「お待たせしたわね」

ちょうどそのとき、岩下さんも戻ってきたので、わたしはやっぱりヘンなことしないで良かった、と思った。

「これ、わたしが作ったのよ」

そう言って、岩下さんがテーブルに置いたのは・・・、グラスに入った、赤いゼリーだった。

赤っていっても、透明な、合成着色料の赤じゃない。

なんかもっと、濃いどろっと濁った赤。

いちごではなく、ワインのゼリーなのかしら。

あまり・・・、おいしそうじゃないけど。

岩下さん、これ、失敗したのかなぁ。ゼラチンがところどころ、固まっちゃってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

@食べる  A食べない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食べる

・・・・いただこう。岩下さんの、手作りだもんね。食べなかったら、気を悪くされそう。

わたしはおそるおそる、ひとくち食べてみた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんていうのかしら。

お砂糖がいっぱい入っていて、しかも香料が、ふんだんに使われていて・・・?

味が、よくわからない。う〜む。

やっぱり、おいしいとは言えないなあ・・・。わたしは、半分以上、残してしまった。

話題も特になかったし、なんだか気詰まりになってきて、わたしは帰ることにした。

とにかくも、先生に頼まれたものも渡したし。


その夜、わたしは夢を見た。同じクラスの、新堂くんの夢だ。

彼はぼんやり、わたしの枕上に座っていた。

正座して、わたしの顔を、ずっと見下ろしていた。ずっと、ずっと、何か言いたそうに・・・。

新堂くんて、夏休み以降、学校へ来てないのよね。わたし・・・、気にしていたのかなあ。こんな夢、見るなんて。

でも、それから、その夢は、毎日続いた。

もう、一ヶ月も続いている。

わたしは、大分まいっている。

でも、今夜も、きっと・・・。(終)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食べない

・・・・ダメだわ。とても、食べられそうにない。

わたしはスプーンを手にしながら、どうしたものか思案していた。

手作りのものを食べなかったら・・・、悪いよね。

と、そのとき。

「ゼリーだけじゃ、甘いかもしれないわね。やっぱり何か、飲み物も持ってくるわ」と、岩下さんが立ち上がった。

わたしはほっとして、

「いいよ、そんなに気を使わないでも」

と言いながらも、彼女がいないうちに、中身をハンカチにくるんで、カバンにしまおうと思った。

岩下さんが出てゆくと、わたしはさっそく作業にかかった。

が、そのとき。


ジリリリリリリ!

「ひゃあ!?」

けたたましい、ベルの音がしたのだ。

・・・電話だわ。見まわすと部屋の片隅に、いまどき見ないような、黒い電話が置いてあって、すごい音を、発している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

@出る  A出ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出る

イヤだ・・・、この音。神経を、ビリビリ刺激してくる。

なんだか息苦しい。こんなの、がまんできない。

わたしは、思いきって電話をとってみた。すると当然だが、音はやんだ。

わたしはほっとしながらも、受話器を取った以上、何か言わなくてはいけないことに、気がついた。

「・・・はい。岩下ですが?」

消え入りそうな声で、そう言うと、受話器の向こうから。

「・・・岩下か。・・・この仇は必ず取ってやるからな・・・!」

とだけ聞こえ、そして、電話は切れた。

な、なんだったのかしら。今の声・・・、なんだか聞き覚えがあるような?

わたしが記憶をたどっていると、ふいに、わたしの後頭部に、何か重いものが打ちつけられたのだった。

そして、急速に、目の前が暗くなって行った。(終)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出ない

よその家の電話なんて、出られないわ。なんて言っていいか、わからないもの。

岩下さん、早く戻ってこないかしら。

そわそわしている間に、電話は切れてしまった。

やっと、岩下さんが戻ってきた。

「お待たせ。・・・今、電話が鳴らなかった?」

「え、ええ。でも、切れちゃった」

「・・・そう。いいわ。用があれば、またかかってくるでしょうから。ふふ」

そう言って、岩下さんがテーブルに置いたのは、数本のミニサイズのペットボトルだった。

なんとなくほっとする。

市販の飲み物だったら、安心して飲めそうだわ。が、よく見ると・・・、

おしるこドリンク、ドクターペッパー、焼き芋ジュース、サスケ。

いまどきどこで売っているのよ、こんなもの!?

わたしはどれを選ぶべきか迷った。

その間、時間稼ぎに何か話題をふろう。えーと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

@新堂の話をする  A日野の話をする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新堂の話をする

「そう言えば新堂くん、ぜんぜん学校に来ないんだよね。どうしちゃったんだろうね」

岩下さんはなぜか一瞬、ちらりと押入れに視線を向け、それから、薄くほほえんだ。

「さあ・・・。どうしたのかしらね。彼のことだから、心配はないと思うけど。

でも、もしかしたら、霊にたたられたのかもしれないわ。

あの七不思議の会に出席して以来、みんなちょっとおかしいのよ。

この間も、坂上くんが、わざわざわたしの教室まで来て、人形が見えるなんて言うしね。

あんな会を不用意に催すべきじゃなかったわね。

一度、みんなで、お払いでもしてもらった方がいいかもしれないわ」

まさか・・・、霊なんてわたしは、信じないけど。

信じないけど、でも、この部屋、西日が強いのね。

濃いオレンジが、岩下さんの綺麗な顔に、陰影をつけて・・・、

なんだか怪談でも聞いている気分になる。岩下さんの話に、吸い込まれてしまいそう。

「・・・わたし、そろそろ帰らなくちゃ」

そう言うと、岩下さんは、顔をあげた。

「そう。そうね、もうじき暗くなるわ。早くお帰りなさいな。ご家族が心配してよ」

「ええ。それじゃ・・・」

わたしは廊下に出た。たしか・・・こっちが玄関だと思ったけど。

わたしは、ゆっくりと歩きだした。ぎしぎしと少し、床がきしむ。それにしても、長い廊下だわ。

長い長い・・・・とても長い。

あまり長いので、ふと不安になってふりむくと・・・、そこにも先の見えない、長い廊下があった。

そして・・・。(終)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日野の話をする

「そういえば、今日、帰り際、日野くんが校門のところに立っていてね。

冬休みにまた面白いこと企画するから、おまえも参加しないかって。

なんか、ストレス解消ができる、とてもすばらしいゲームをやるから来いって。どんなゲームか、岩下さん、知ってる?」

「ええ。わたしは毎回参加しているもの。 あれはとても、楽しい遊びよ。みんなでひとつになって、盛り上がれる・・・。

日野くんて意外と、遊びのセンスいいのよね。ふふ。

だから、次回はぜひ、参加してね。わからないことがあれば、わたしが教えてあげる。手取り足取り・・・」

わたしは俄然興味が沸いてきた。どんなゲームなのかなあ。

いつもクールな岩下さんが、ここまでいうなら、ゼッタイ楽しめることよ。今からすごく、楽しみだわ・・・。

そしてわたしは、冬休みを期待しつつ、おしるこドリンクをもらって、帰途についたのだった。(終)

  

 

THE END

 

 


前のページに戻る