再会
―どうして泣いてるの?― なぜかこの言葉が思い浮かぶ。 誰か言ってたっけ。 ま、いいか。 僕は坂上修一。ただの高校生…のはずだった。 でも、たぶん今は、何処か別の世界に迷い込んじゃったんだと思う。 理由は… 「今度の新聞で、うちの高校の七不思議の特集を組もうぜ」 部長のこの一言から始まった。 そして新人の僕がこの企画の責任者になってしまい、今日の放課後、新聞部室へ 行った。 「それでは、一話目は…」 ここまではよかった。しかし、一話 話すごとに人が消えていって…。 そして今は、僕しかいない。 いや、正確には、僕と、仮面を付けた少女しかいない。 「坂上君?」 彼女が言った。何故僕の名前を知っているのか? 疑問に思ったが、「何…?」と答えた。 それは多分、彼女のことだから、僕のことを知っていてもおかしくないだろう。 だって、彼女は僕の― 「あなた、この前私の夢を見たよね?あの酷いいじめの夢を」 「うん」 「私の名前、覚えてるよね?」 「いや、覚えてない。だけど…」 「だけど、なに?」 「君をいじめたのは、新堂さん達の親だろう?」 「そうよ。私を死に追いやったあいつら。復讐をしてやった。自分の子供を  失う悲しみを教えてやった。だから、私はもうすぐ消えるわ。成仏するの。  坂上君、いろいろありがとね」 「どうして泣いてるの?って、僕は夢の中で訊いたよね」 「うん。そうだよ。夢の中だったけど、私に救いの手をさしのべてくれたのは  あなただけだった。ありがとう。もうちょっとあなたが早く生まれてたら…  ううん。でも、いいの。本当にありがとう。あなたのこと、忘れないから」 そう言って彼女は消えてしまった。 僕は、思う。 彼女がまた、この世に生まれてくる日までに、いじめというものを無くそうと。 そして、この綺麗に見える世界は、本当は汚いのだと。 ―その後、僕は毎晩この夢を見るようになった。  そこで毎晩、君を救っている。この罪を洗い流すために。


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