学校であった怖い話〜鎮魂歌〜


序文

あれから、もう二年の月日が流れた。
新聞部の企画で、七不思議の特集を組んだあの日から・・・。

あの日以来、僕はいつもと変わらない平穏な日々を送っていた。
あんな事があったにも関わらず、僕は新聞部を辞めなかった。


二年に上がると同時に、あの企画の段取りをした日野先輩や、
語り部だった新堂先輩たち三年は卒業し、僕は、学校と家を行き
来する単調な日々を送っていた。
かつて旧校舎だった場所は、マンモス校故に増えた生徒を考慮し
今では第二体育館が建てられ、その中に幾つかの部室も入った。
「旧校舎」という、あの日体験した恐怖の根源の不在が、あのと
きの記憶を少なからず薄れさせている。


三年に上がる少し前、僕は新聞部の部長になった。
同期の部員に推薦される形で、僕は部長のポストに就いた。
はじめは、少し面倒臭がっていたが、今にして思えば、好都合
なのかもしれない・・・。

いつからか、旧校舎跡地に建てられた第二体育館に関する、妙な
噂が流れていた。

あの体育館には、幽霊が出るのだという・・・・・。

新聞部にとって、この噂は絶好のネタになり、部員の半数も体育
館の調査を支持していた。
部長の僕も、この意見には賛成だったし、元より、僕には卒業す
る前にやっておきたかった企画があった。
それは・・・、


   もう一度、この学校の七不思議の特集を組むこと


僕は、各学年の部員に協力してもらい、各学年で怖い話を知って
いる生徒を「二人ずつ」選出し、今日の放課後、その生徒を部室
に集めるよう指示しておいた。あのときの日野先輩のように。
各学年で二人、計六人の計算だ。
僕は意図的に、七人目を呼ばないことにした。
きっとこの学校の意志によって、七人目は、おのずとやって来る
気がしたからだ。

これから僕は、あの日と同じく、この学校、そして旧校舎跡地に
建った第二体育館にまつわる話を聞きに、あの日と同じ、新聞部
の部室へ向かわなければならない。
空も、空気も、あの日と同じ。
ふいに、頭の中で聞き覚えのある、けれど思い出せない声が囁いた。


   恐怖は繰り返される、と


さあ、扉を開けよう。
新しい恐怖と、真実を知るために・・・・・。
そして、彼らの鎮魂を願って



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