今日の新聞部はいつもと違っていた。



頑 張 る 君 に


朝、僕は原稿を仕上げるため部室にきていた。

「なんだこれ・・・」
扉に貼られた一枚の紙には『坂上修一立ち入り禁止』と極太マジックで書かれ
ている。
そして、最後の方に小さく『by日野』と書かれていた。
「・・・なんで?」
なにか日野先輩の気に触る事でもしたのだろうか、と僕は記憶を辿った。
(何も思い当たらないけど・・・とりあえず謝っておこう)
そう考えて、僕は部室のドアを開けた。

「あれ 、みなさんなんでここに?」
そこには、以前7不思議の会で知り合った語り部のみんながいた。
「坂上クン駄目じゃないか入ってきちゃ!」
風間さんがいきなり怒鳴りつけてきた。
「そうよ、坂上君。いま大切な話の途中だから・・・」
岩下さんも後に続くように言った。
(なんで?だって僕は新聞部だし・・・入っちゃ駄目って・・・)
僕がブツブツと文句を言っていると、誰かが僕の頭を思いっきり叩いた。

「あのな、ドアの貼り紙みただろ?お前は今日一日立ち入り禁止だ」
その正体は日野先輩だった。
「あいたた・・・。でも僕、原稿書かなきゃいけないんですけど・・・」
僕がそう言うと日野先輩は、
「原稿なら教室で書け!今度入ってきたら新聞部クビだからな!」
そう言ってドアを力いっぱい閉めた。

(なんだよ。日野先輩もみんなも僕だけ除け者にして・・・)
「はぁ」っと溜息をついて僕は廊下を歩いた。


−放課後−

僕は新聞部の部室に行こうとした。けど、今朝のことを思い出し今日は真っ直
ぐ家に帰ることにした。

昇降口

下駄箱を開けて履きなれた紐靴に手をかけたとき、
「おい!坂上。なに帰ろうとしてんだよ!!!」
と、後ろから僕を呼ぶ声がした。この声は・・・

「新堂さん」
新堂さんは僕の顔を見るとニッと笑った。
「よぉ、日野が呼んでるぜ。「今すぐ来ないと新聞部クビ」だとよ」
「え、でも〜・・・。僕、今日一日部室に立ち入り禁止なんです・・・」
僕が弱々しい声で言うと新堂さんは、
「男がぐちぐちいってんじゃねえ。みんな待ってんだ、さっさと行くぞ」
そう言って僕の手を引っ張って歩き出した。
(みんな待ってるってどういうことなんだろう?)
そうこう考えているうちに部室に着いていた。新堂さんが部室のドアを荒々し
く開ける。

「みんな、主役を連れてきたぜ」
そういって僕を部室に押し込んだ。
(立ち入り禁止なのに!?このままじゃ僕、クビになってしまうー!!!)
ひとりで慌てふためいている僕に岩下さんが微笑みながら言った。
「はやくそこに座りなさい。今日はアナタのために会を開いたのよ」

−−−−−−−−僕のため?

「ど、どういうことですか?」
僕のために会を開くっていったい・・・。
「いつも日野の奴隷状態で頑張っている坂上にちょっとしたプレゼントだ」
そういったのは新堂さんだった。
「そうそう。坂上君、毎日取材だの撮影だのでてんてこまいでしょ?
たまには息抜きもいいかなーってことで、日野先輩が提案したんだよ」
ニッコリ笑っていったのは福沢さん。

「ひ、日野先輩が!?う、嘘だ・・・。そんな・・・」
ありえない!と付け加え言うと、日野さんが僕の頭をまた叩いて
「嘘じゃねえよ。できの悪い後輩に活を入れるためにな」
そう言った。
「うわ〜!日野が照れてるぞ〜!!」
そんな日野さんを風間さんがちゃかす。

「本当に・・・僕の為に・・・ですか?」
胸がギュッと締め付けられるような感じがした。

「本当だ。坂上の為に準備したんだぜ」
「いつも人一倍頑張っているもの。みんな知っているのよ?」
「お疲れさま坂上君〜!!」

みんなの言葉が温かくて、優しくて・・・。

「あ、ありがとう・・・ございます・・・」

自然と涙が溢れた。

「なに泣いてんだよ!湿っぽいのはキライだぜ」
新堂さんがバシッと僕の背中を叩いた。

「じゃ、せっかくみんな集まったんだから7不思議の会パート2でもやらな
 い?」
そう提案したのは福沢さんだった。
「やろうやろう!」
みんな賛成した。


それから・・・
風間さんが風間ワールド全開みたいな一発ネタを連発し、
それに嫌気が差した新堂さんが愚痴をこぼし、
岩下さんはカッターを見つめながら笑みをこぼし、
細田さんは福沢さんを口説き始め、福沢さんはそれを阻止し、
荒井さんは相変わらず俯いて、日野先輩はいつもどおり僕をからかった。
結局最後は、いつもどおりのみんなで解散。でも僕はそれがとても楽しかっ
た。


みんなが帰った部室には日野先輩と僕だけが残された。後片付けだ。
「日野先輩、今日は本当にありがとうございました・・・」
僕の言葉に日野先輩はにやっと笑って
「明日からはいつもどおりに扱うから覚悟しろよ」
そう言った。





E N D



前のページに戻る