学 校 で あ っ た 抜 き 打 ち テ ス ト(2)


「失礼します」
僕は、さっきと同じように写真を道行く人に見せ、美人な先輩のクラスを聞き
今まさに、そのクラスに来ていた。

教室のドアを開けると、放課後だというのに帰ってないクラスの人たちが騒い
でいる中で、一人、自分の席に座り静かに何かを眺めている彼女を見つけた。
僕は、近くにいた人の了解を得て教室に入り、彼女の方へと歩んだ。

「すみません。えっと、お時間いいでしょうか?」
僕が遠慮がちに問うと、陰のある笑みを見せ「いいわよ」と静かに言った。
そして、眺めていた物をスカートのポケットに仕舞うと、また口を開いた。

「新聞部の坂上修一君でしょう?日野君から話は聞いているわ」
それなら話が早い。さっさと怖い話を教えてもらって次へと急ごう。
「じゃあ、よろしくお願いします」
僕は、日野先輩に渡されたノートを開いた。
「私は岩下明美。今日は、怖い話を聞きにきたんでしょう?」
「あ、はい」
僕の返事を聞くと、岩下さんはさっきポケットにしまった物を取り出した。

それは、カッターナイフ。キチキチと音を出して鋭い刃が現れる。
「え?あの・・・岩下さん?」
いきなりの岩下さんの行動に僕は驚いた。
「簡単には話さないわ。そうね、今から私が聞くことに全て正直に答えてくれ
 たら話してあげるわ。ただし絶対に嘘はつかないで。私、嘘つきは嫌いだか
 ら」
そう言って、またあの陰のある笑顔を見せた。

嘘をついたら・・・もしかするとカッターで・・・そんなの嫌だ。
岩下さんの目は冗談なんかを言っている目じゃない。本気だ。

「分かりました」
僕は覚悟を決めた。要は嘘さえつかなければいいんだ。
そうすれば怖い話も聞けるし無事に終わる。嘘さえつかなければ・・・。

「ふふふ・・・。じゃあ始めるわね。坂上君。あなた今、恋人はいるの?」
・・・へ?僕は体中の力が抜けた。どんな凄い質問攻めがくるかと思えば。
「いませんよ」
僕は真実を答えた。今の僕には残念ながら恋人と呼べる存在はいない。
「そう。残念ね。次の質問ね。・・・日野君のことをどう思ってるのかしら?」
・・・え?恋人の次は日野先輩ですか。
「そうですねぇ。僕にとって日野先輩は大魔王的存在ですね・・・。まあよく言え
 ば頼りになる先輩・・・ですかね」
その答えに岩下さんは、満足そうに笑った。あの陰のある笑みじゃなくて。
しかし、大魔王なんて本人の前では絶対にいえないな。言ったら殺される・・・。
なんて考えていると、岩下さんはカッターの刃をしまった。
どうやら質問は終わりらしい。

「・・・気に入ったわ坂上君。正直な人は私、好きよ。あなたになら七不思議の会
 も任せられるわね。うふふ、七不思議の会のときはよろしくね。・・・あらもう
 こんな時間だわ。用は済んだでしょう?私、帰るわ」
そう言って、岩下さんは席を立ち教室から出て行った。

・・・あれ?今、岩下さん「七不思議の会のときはよろしくね」って言ったよな?
ってことは、岩下さんも出るのかな?
それに任せられるってどういうことだろう?

様々な疑問を抱きながらも、僕は次の人の話を聞くために教室を出た。

・・・次は、カメラ目線でポーズを決めているこの人の話を聞くことにしよう。





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