EPISODE V 〜倉田さんの本命〜
今日はバレンタインです。 倉田恵美。本命&+αの人たちにチョコを渡してきます。 「さあ、ガンバルぞ〜〜」 − 放課後の学校 − 「まずは、すぐ見つかりそうな細田さんから・・・きっと2年の男子トイレかな」 〜2F南側 男子トイレの前〜 「あっ。細田センパ〜〜イ」 「ん?あーー!倉田さんじゃないですか」 う・・・油ぎった顔をほころばせて駆け寄ってくる・・・・・。 やっぱこの人は苦手だわ。 「これあげます。今日はバレンタインですしね」 とたんに細田センパイの顔が、喜びに満ち溢れた。 「く・・・倉田さん!君は僕のことを・・・」 そう言いかけた瞬間。 「あっ。一応言っときますけど、それって義理ですから。まぁ、わかってると  思いますけどね。それじゃぁ」 「あ・・・・・・」 あはは。細田センパイ、とてもおもしろい顔をしてたわ。 「次は、と・・・」 ・ ・ ・ 「あ〜疲れた」 七不思議の会の時に知り合った人たちへチョコを渡すのに、どのくらい学校中 を走り回っただろうか。 荒井さんは見つからなかったけど、新堂さんと風間さんには、ちゃんと渡せた わ。 でも・・・まだ本命の人には渡せてないけど。 「きっとセンパイは部室に居るわね」 〜新聞部の部室〜 ガチャ 「ん?おぉ倉田じゃないか。どうしたんだ?今日は仕事は無いはずだろ?」 はぁ〜。なんか緊張しちゃってるわ。 「え〜〜っとですね・・・・・」 「なんだよ?」 あ〜も〜どうしよう・・・・・。 「今日は何の日か知ってますか?」 「ん?今日・・・2月14日・・・・・・あぁバレンタインか」 「そうですよ」 もう!一体私は、何を言ってるのよぉ〜。 「・・・で?それが何なんだ?」 「えっと・・・。センパイはチョコ貰ったのかな〜?って思って」 も〜!自分でも、何言ってんだかわかんないわ〜〜。 「・・・倉田。俺が貰ったとでも思ってるのか?」 「あ・・・・・・」 センパイが泣きそうな顔をしてる。 やっぱ、言っちゃダメだったのね〜。 「お前・・・わざわざそんなことを聞きに来たのか??」 ・・・・センパイ。随分と機嫌が悪そうだわ。 あ〜〜私の馬鹿ぁ!! 「あ・・いえ・・・そうじゃなくて・・・これを渡そうと思って」 私は、かばんからチョコを取り出してセンパイに渡した。 「なんだ?・・チョコか?」 「これが消しゴムにでも見えますか?」 「いや。全然見えないな。・・・義理でもありがとよ」 酷いな・・・。それが義理に見えるのかしら? ガサガサ 「ん〜〜うまいうまい」 あ〜!センパイもう食べちゃった。 「よかった〜おいしくて」 「手作りかこれ?」 あ!手作りってとこに気付いてくれた〜〜。 「はい。もちろん手作りですよ」 「お前にこんな特技が・・・ん?手作り?手作りってことはもしかして・・・」 やっとセンパイに気付いてもらえたみたい。 「はい、そうです。本命なんです!」 「マジ・・・・・・?!」 なんか複雑そうな顔をしているわ・・・。 「私は本気ですよ」 「・・・実はな・・・・・・俺もさ・・・お前のこと好きだったんだ」 ・・・嘘。すごくうれしいんだけど・・・。 「本当ですか?」 「でも俺、お前とは付き合えない」 「え・・・・・」 センパイ・・・なんで? 「俺さ。卒業したら遠くへ引っ越すんだ。だから・・・」 引っ越し・・・・・・そんな・・・。 「そう・・・ですか」 「・・・・・・スマン」 仕方ない・・・のかな? 「じゃぁ私・・・帰りますね」 なんかすごく最悪な結末。 「・・・・・・」 ガチャ 「倉田!!」 「はい?」 「俺、お前のこと好きだからな」 「私も好きですよ」 私は涙をこらえながら部室を後にした。 ・ ・ ・ それからしばらくして、私と先輩は付き合うことになった。 とりあえずセンパイが引っ越すまでは。 でもきっと、引っ越してからも付き合ってると思う。 遠距離恋愛ってやつかな? センパイといつまで続くかはわからないけど、今はすごく幸せ。


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