岩下×坂上×風間
キーンコーンカーンコーン 今日の授業は終わったわ。 あいつに会う前に早く帰りたい。 大好きな絵も描かないで早く家に帰りたい・・・・。 ガラッ 教室のドアをあけると、そこにはあいつの姿があった。 「やぁ明美。今帰りかい?」 そう言ってあいつは私の肩に手をかけた。 バシッ 「なれなれしく私に触らないで。それに私の名前を呼ばないで!」 あいつはちょっと驚いていた。 いつもならなにも抵抗しない私が、今日は抵抗してるからだ。 「なんだよ。別に減るもんじゃないんだからいいじゃないか」 そう言ってまた肩に手を伸ばしてくる。 私はカバンからカッターを取り出した。 チキチキチキ・・・ 「その喉を掻っ切ってあげましょうか?」 「・・・・・・」 あいつの顔が青ざめていくのがわかった。 「私はねぇ。好きな人以外に名前を呼ばれるのと触られるのが大嫌いなのよ!」 珍しく私がキレた。 いつもならこんな奴放っておくのに・・・・・。 「チェッ!」 そう言ってあいつは消えていった。 「フフフ。いい気味」 私は何も気にしないで家に帰ったわ。 あと数十mで家に着くかという時。 またあいつが目の前に現れた。 「・・・・・・なんのつもり?」 あたしが尋ねる。 「別に。ただお前が好きなだけさ」 あいつが言う。 「・・・・」 「お前を・・・明美は絶対誰にも渡さない!」 チキチキチキ・・・ 「名前を呼ばないでって言ったのがわからないのかしら?」 ムカツク。 あいつに名前を呼ばれただけで吐き気がする。虫唾が走る! ゴソゴソ あいつがカバンからなにかを取り出している。 「!!」 それは刃渡り15cmくらいのナイフだった。 「お前が誰かのモノになるなら・・・お前を殺して僕だけのモノにしてやるよ・・・」 あいつの眼は完全にイってた。 「・・・本気・・・・なの?」 「本気に・・・決まってるだろ」 あいつの手は震えていた。 「殺すならとっとと殺しなさい」 死ぬのは別に怖くなかった。 ただ・・・・1つだけ心残りがあるわ。 「そんなに死にたいなら殺してやる。そしてお前は永遠に俺のモノさ」 あいつは言う。 私はこれからあいつに殺される・・・・。 なぜかあの人の顔が、あたしの頭に浮かんでくる。 たぶんもう2度と会えないからだろう・・・。 タタタタ・・・ あいつが勢いをつけて走ってくる。 「・・・・」 私は目を閉じながらあの人の事を思い出す。 もう2度と会えない・・・私が愛したひと・・・・。 「明美〜〜〜・・・・」 あいつが私の名前を呼んだ。 「・・・・・・・・・」 もう・・・死ぬのね・・・・・。 そう思った瞬間。 ドカ! とても鈍い音がした。 ・・・・恐る恐る目をあけてみるとそこには・・・・・気絶しているあいつと息を切らし たあの人がいた。 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・。大丈夫かい?明美」 「修一さん・・・・」 とても嬉しかった。 修一さんが私を助けてくれたから。 「明美・・・怪我は?」 修一さんは優しく聞いた。 「大丈夫よ・・・・。修一さんが助けてくれたから」 「そうか・・・・・ならよかった」 修一さんは安心したような顔をした。 「明美に怪我でもあったら、こいつを殺すだけじゃ気がすまないよ」 (修一さん・・・) 「でも、なんでわかったの?」 (私の愛した人・・・) 「なんかヤバそうな雰囲気だったから急いで来たのさ。これといった理由はない  かな。勘ってやつさ」 修一さんは笑いながら言った。 (私を愛してくれる人・・・) 「修一さん・・・・」 (修一さんなら私を裏切らない・・・) 「ん?なんだい明美」 「愛してるわ」 私は真顔で言った。 「・・・・僕もだよ」 修一さんは少し照ながら言った。 「うぅぅぅぅ・・・・」 あいつが眼を覚まし始めたみたい。 「明美ぃ・・・好きだぁ・・・・・」 まだなにか言っている。 「・・・・・・」 チキチキチキ・・・ 「・・・殺してやる」 「あ・・・明美。そこまできれるなよ」 修一さんは言う。 「・・・・修一さんがそう言うならやめるわ」 私の中では、修一さんの言うことは絶対だわ。 「あ・・・けみ・・・」 まだ言ってる・・・。 「・・・・・・」 ドカッ! 修一さんがあいつをカバンでおもいっきし殴った。 「まっ。殺されるよりはいいだろう」 修一さんは笑いながら言う。 「そうね」 私も笑いながら言う。 「これからどうするの?」 「ん〜。家に帰って宿題でもするかな。明美は?」 相変わらず修一さんは真面目だわ。 「宿題もないし特にすることないわ」 「そっかぁ」 「よかったら家に来てお茶でも飲む?」 「いいねそれ。ついでに勉強も教えてくれない?」 修一さんは嬉しそうに言った。 「いいわよ」 私も嬉しそうに言った。 私は今とても幸せよ。 でもこの幸せはいつまで続くのかしら? 修一さんもいつか私を裏切る時が来るのだろう・・・・・・。 その時は・・・・修一さんを・・・・・・。
〜終わり〜


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