続・学校であった怖い話〜プロローグ


今日、日野先輩に部室に呼び出された。
九月も中旬だが、残暑の為か蒸し暑い。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると新聞部の部室が見えてきた。
「日野先輩、入りますよ」
と言いながら部室のドアをノックしてから開ける。
「よお坂上、待ってたぜ」
日野先輩はイスに腰をかけながらそう言った。
「日野先輩、用って何ですか?」
「ん?まあ、そうあせるな、今日蒸し暑いだろ?何か飲もうぜ」
そう言いながら日野先輩はペットボトルのジュースを取り出した。
「お前が来るまで待ってたんだぜ。ちなみに俺のおごりだから遠慮しないで飲めよ」
「あ、はい、いただきます」
おごり・・・か、また僕に変な企画を任せるつもりだろうか、
それとも先輩としての厚意だろうか・・・
「どうした、早く飲めよ」
「あ、はい。」
何を考えてるんだ僕は!厚意だとしたら日野先輩に失礼じゃないか。
僕はペットボトルのキャップを開けジュースを一口飲んだ・・・。
今日は蒸し暑いだけにジュースがやけにおいしく感じる。
少しでも日野さんを疑った僕がバカだった。

「で、本題なんだが」
僕と同じくジュースを一口飲んだ日野さんが言った、
「ええ、何ですか」
「お前にもう一度七不思議をやってもらいたい」
「えっ!」
僕は全く予想していなかった展開に大声をあげた。
「あの、日野先輩、それってどういうことですか?」
「いや、前の七不思議の企画は流れちまっただろ?」
「ええ」
確かにあの企画は、スケジュールの問題や旧校舎を取り壊した時に出てきた白骨
やらで企画倒れになってしまった。
僕はそのときに、七不思議で集まってもらった六人全員に謝りに行ったのを覚え
てる。
「俺としてはあの企画が潰れちまったのは結構残念に思ってたんだ、
それでだ、また新し企画としてやり直すということに決まったわけだ」
日野さんは得意そうに笑いながらそう言った。
僕も一応、新聞部員だがそんな話は全く聞いていない。
「もう七不思議を話してもらう奴らにアポはとってある。後はお前次第だ、坂上」
「あの、どうしてまた僕なんですか?」
「ああ、俺も初めは別の奴にやってもらおうと考えてたんだがな、やっぱり経験者
 の方がいいってことで、お前にやってもらおうと思ったんだ。」
もっともらしい理由だ。
だけど、もう一度あの七不思議をやる勇気が僕にはあるのだろうか・・・。

「あと、メンバーは前と同じ奴らなんだ。あいつらと顔見知りだっていうのも
 お前を選んだ理由の一つだ」
「えっ!またあの人達が来るんですか?」
それは以外だった。メンバーを一新している、というのが僕の考えだったからだ。
「なかなかメンバーが集まらなくてな。ダメもとでもう一度あいつらに頼みにいっ
 たらあっさりOKが取れちまったんだよ。まあ、あいつらもどっかで、自分が話
 した怖い話がダメになったことを気にしてたんだろ」
僕は、彼らに話してもらった怖い話を思い出した。
僕は怖い話が得意では無かったが、あれ以来、怖い話にハマってしまったのかも
しれない・・・。
「あの、前に書いた記事を使うのはいけないんですか?」
日野先輩に聞いた。
「やっぱり前に書いたやつじゃあ新鮮さがないだろ。それにお前も別の怖い話を
 聞きたいんじゃないのか?」
日野さんはからかうような口調で僕に言った。
もうしょうがない、僕も腹をくくろう。
「ええ、分かりました。僕も、もう一度やってみます。」
「その気になってくれたか、坂上」

日野さんはその後、会合の日時を僕に教えてくれた。
「あと、俺はその日は用事があって来れないんだ。まあ、お前なら大丈夫だよな?」
「はい・・・あっ!七人目はどうするんですか?」
こればかりは聞いておかなければ。
「ん?七不思議が全部そろうと良くない事が起こるって言うしな、とりあえず六人
 で始めといてくれ」
そう答えると日野さんは「用事がある」と言って帰ってしまった。
一体どういうことなんだろうか・・・。


今日はいよいよ2回目となる七不思議の会合の日だ。
今日もあの日と同じでどんよりとした雲が空一面を覆っている。
放課後の学校に人は少なく、廊下を歩く僕の足音だけが「カツーン、カツーン」と
響いている。
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部室の前に着いた・・・。何もかもが、あの時と同じように感じる。
僕は意を決すると部室のドアを開けた。

僕より先に来ていたのは、風間さん、岩下さん、そして新堂さんの3人だった。
一瞬、沈黙してしまったが、気を取り直して今来ている人たちに挨拶をした。
「あっ、みなさんお久しぶりです、今日はよろしくお願いします。」
僕がそう言うと、
新堂さんは「ああ」と返事をし、
岩下さんは一瞬視線を僕の方にやり、また元の方向に戻した。
風間さんは「やあ、坂上君、久しぶりだね、それにしても他の連中は何をしてるん
      だろう?まあ、僕は紳士だから時間に遅れる真似はしないけどね」
と言ってきた。この人は相変わらずみたいだ。
僕も先に来ていた人に習って、まだ来てない人を待つことにした。
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5分経ったがまだ誰も現れない。
さすがに前ほどの緊張は無いが、これから怖い話をするとなると、胸の鼓動は
自然と高まってゆく。
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さらに5分経ったとき、荒井さんが来た。
「あや?坂上君ももう来ていたのですか、すみません遅れてしまって。」
「いえ別に・・・。」
僕がそう言うと荒井さんは「そうですか」と言い、席に着いた。
それからすぐに福沢さんが来た。
「あれ、みんな結構早く来てるんだね、私も早い方かなって思ったんだけど」
彼女はそう言ってから、僕と軽く挨拶を交わして席に着いた。
それから3分が経ったとき細田さんがやって来た。
「あっ、みなさんもう来ていたんですか、すいません遅れちゃって」
そう言いながら細田さんも席に着いた。

これで厳密に言うとそうでは無いが全員がそろったことになる。
「みなさん、2度も集まって頂いてありがとうございます、前回と同じく進行を
 させて頂く坂上です」
僕が全員の前でそう言うと、
「おい坂上、七人目はどうしたんだ?まだ七不思議を始めるのは早いんじゃねー
 のか」
新堂さんがそう言ってきた。
「えっと、日野さんが六人で始めてくれと言っていたので、とにかく六人で始め
 たいと思います」
僕がそう言うと、六人全員が納得したような、しないような顔をしてうなづいた。
僕は全員を見渡した。
「それでは、さっそく始めたいと思います。一話目は・・・」
こうして、再び学校であった怖い話が始まったのだった。


続く・・・


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