*この作品は、椎名海桜さんのサイト『Black_Limited(閉鎖しました)』で、2001年3月まで公開されていたものです。


その後の、その後の学校であった怖い話

 

STORY 1:細田 友晴
〜 やっぱり、君は僕だけの女王様 〜

 

「ふ、福沢さん・・・今、手・・空いてるかな?」

緊張のあまり 声がうわずってしまった。

声をかけた相手・・・福沢さんが ふりかえる。

「・・・細田さん?・・・何の用ですか?」

やばい。警戒されてる・・・。

この前の新聞部の集まりで ついポロッと本音を出しちゃったからなぁ。

「こ、この前・・・その、新聞部のときさ・・・」

「私、気にしてませんから」

顔をほんのり赤くしながら 彼女はうつむいた。

・・・・のだったら よかったけど。

きっぱり!はっきり!!すっぱり!!! と僕の顔を睨つけて 断言してくれた。

「そ・・・そう。なら、いいんだけど・・」

「用件はそれだけですか?ちょっと用があるんで・・・」

その場から さっさと去ろうとする福沢さんをあわてて呼び止める。

「ちょっと待ってよ!!」

「・・・まだ何か?」

うんざり、とした表情ながらも 足を止めてくれた彼女。

今だ!ここで一発、風間さん直伝・必殺口説き文句を・・・!!

「僕と一緒にトイレに行かない?」

「・・・・・失礼します」

たたたた、と彼女は走りさってしまった。

く、くそ・・・やっぱり

『一緒にトイレの霊的配置について語り合わない?』

の方がよかったか・・・。

いつか・・・いつか、一緒にトイレ巡りをしてやる・・・!!

 

STORY 2:福沢 玲子
〜 ホンキになったら怖いのよ 〜

 

何なのかしら、あの細田って人・・・。

僕だけの女王さま とか言ってたけど・・きもーい!!

私はそのまま あの人の教室へと向かう。

あの人?それは もちろん・・・。

「しんどーさ〜ん☆☆」

「ああん??・・・なんだ、おまえか」

あの人 こと新堂さんは教室にいた。

どうやら一人で雑誌を読んでたみたいね。

「聞いて下さいよぉ!この前の集まりに来てた・・・細田って人。

『一緒にトイレに行こう』

なんて言ってきたんですよぉぉ」

「細田が?ふーん・・・」

雑誌から目を離さずに いいかげんな返事を返す。

『なにぃっ、俺の福沢に!!』

とか言ってくれたら・・・感激なんだけどなぁ・・・。

無言で横顔を睨んでると やっぱり気がついたみたい。

「なんだよ・・・」

「別に。どーして、わざわざ来てくれてる女の子に対して冷たいかなぁ?

って思っただけです」

「わざわざって俺は頼んでないだろ。・・・そうだ、福沢は田口と同じ一年だったよな」

雑誌を閉じて 話しかけてきた!

きっかけが田口さんなのが、ちょっと気に入らないけど・・・仕方ないよね。

「そうですよ。あたしの学年、忘れちゃったんですかぁ?

ちゃんと出席番号も、住所も、スリーサイズも、 親の収入も教えたじゃないですか!」

「・・・それはともかく。今日・・・何か行事があったのか?

田口のクラスがやけにざわざわしてたけどよ」

「ああ。それは・・・この前の、田口さんが書いた記事。

あれが一年の中で話題になって・・・ もみくちゃにされてましたよ」

その記事には 私や新堂さんの写真も貼ってあって・・・

密かに新堂さんのファンが増えてるのよね。警戒しなくちゃ。

「もみくちゃ・・・ってなんで?」

「なんでって、そりゃあれだけ凄い話を書いたんですから。

本当の話なのか!とか問いつめられたり・・・

そうそう、不謹慎だって怒ってた先生もいましたよ。

別に田口さんが悪いわけじゃないのに」

がたん

突然 新堂さんが立ち上がった。

真剣な表情・・・ますます惚れなおしちゃうぅぅ。

「ちょっと行ってくる」

「・・・え?どこにですかぁ??」

私の問いには答えず 風のように教室から出て行ってしまった・・・。

くすん。

でも、鞄はここに置いてあるんだし・・・待ってよーっと。

 

STORY 3:新堂 誠
〜 いつの日か、きっと 〜

 

田口 真由美は職員室前の廊下にいた。

「あれ?・・・新堂さんじゃないですか」

「・・・・偶然だな」

我ながら・・・どーして『探してた』って言えないかな?

「そうそう、新聞・・・読んでくれました?」

田口は屈託の無い笑顔で、微笑みながら問う。

「いや・・・」

「そうですか・・・私の教室の廊下側の壁に貼ってあるんですよ。

もし良かったら見てくださいね。新堂さんの写真も貼ってあるんですけど

女子生徒が すぐにはがそうとするから 困ってるんです」

そういえば 体育館で一枚撮ったんだよな・・・。

それにしても 俺の写真なんか何に使うんだか。

「田口・・・そんな事より、お前今回の新聞で何か言われてるらしいじゃねえか」

「え?・・・あ、まあ・・・」

意外そうな表情をした田口は、その後困ったようにこう言った。

「やっぱり信じてくれないんですよね。

まあ、興味を持ってくれた人もたくさんいましたけど。

・・・酷い人は、私たち全員サギ師だ!なんて言うんですよ」

「・・・・ひどいな」

「ですよね。私は何と言われてもいいんです。

・・・でも、新堂さんたちがサギ師なんて言われるのは 我慢できません」

軽く下唇を噛む。

俺だって田口がサギ師よばわりされるのは、耐えられない。

「誰が言ったんだ?」

「・・・1−●の椎菜くんですけど・・・」

「行ってくる」

俺は拳を固く握りしめ 走り出した。

一発 ぶん殴ってやる・・・!!

椎菜を田口の前に突き出して 謝らせてやろう・・・!

そこまですれば 田口だって気づくよな・・・。

俺のコトを、さ。

 

STORY 4:田口 真由美
〜 愛 in スンバラリア 〜

 

「し、新堂さぁぁん!!」

私は 一人ぽつんと廊下に取り残された。

やっぱり言わなきゃよかったかなぁ・・・。

考え込んでいると、誰かに後ろから目隠しされた。

「ひゃあ!」

「わたしは悪魔の使いだ」

どきどきどき・・・。

まさか本当に悪魔の使いだと思ってる訳じゃない。

その犯人がわかってるから どきどきしちゃうのよね。

「風間先輩・・・ですね?」

「なーんだ、ばれちゃったか」

手がどかされて 後ろを見れば・・・やっぱり風間 望先輩。

他の人はなんて言うか知らないけど 私は先輩の事が・・・その・・・。

「どーしたの?田口くん。顔が悪いよ?あ、元からか」

「ひ、ひどーい。・・・・・先輩、何してるんですか?職員室の前で」

どきりんこ、とわざわざ口に出した先輩。

あからさまだなぁ。

「何か悪いことしたんですか?」

「滅相な事を言うなよ。

この僕が職員室に呼ばれるなんて無様なことする訳ないだろ?」

「ありそうです」

即答。

言葉を詰まらせた先輩。

「そんな事はスンバラリアに誓ってないよ」

「先輩・・・よく『スンバラリア』って言葉使いますよね。

一体、何々ですか?スンバラリアって」

「んー・・・そうだね。わかりやすく言ったら『海の鯉』ってとこかな?」

こい?こいって鯉のこと?鯉は海水には住めないはずで・・・。

「よくわかんないですけど・・・」

「それは、自分で考えたまえ!それじゃ僕は失礼するよ」

そう言って職員室の戸に手をかける。

「やっぱり職員室に入るんじゃないですか・・・」

「僕は『職員室に入らない』とは言ってないよ。

それに僕は自発的に入るんだし。それじゃあね、田口くん」

・・・・・先輩ってば・・・・・。

先輩が職員室へ消えてしまうと、廊下には誰もいなくなってしまった。

 

STORY 5:風間 望
〜 僕の血は 君の為にある 〜

 

「・・・・また来たの?」

「冷たいなぁ。で、今日はどれくらい進んだの?」

職員室の奥・・・事務室に岩下 明美はいた。

本当は 生徒入室不可なんだけと・・・。

「岩下ほどの画力の持ち主が

「事務室の窓から見た風景を描きたい」

なんて言えば先生だってね〜・・・。 ・・・ほー・・・さすがだ」

覗きこんだキャンバスには 岩下らしいタッチの風景があった。

ここの窓から見える林だ。

どうしても描きたい という願いで入室許可が降りたらしい。

「早く出て行った方がいいわよ」

筆を休めず岩下が言う。

一度もこちらを見ることは無い・・・いつものことだけど。

「今日も先生につまみだされるでしょうから」

「それでもいーよ。少しでも長く、岩下といられるならね」

彼女の背中に 微笑んで言う。

なんとなく 岩下には背後が見えているような気がするから・・・。

「先生がつまみださなくても 私が追い出すかも知れないわよ。あんたを殺してね」

ここで岩下がはじめて振り返る。

手に愛用のカッターナイフを握りしめて。

「・・・・・・」

ここまでは いつもと同じ。

昨日まではここで あっさりと引いてたけど・・・!

「いーよ。岩下なら」

僕はカッターを構えている岩下へ歩み寄っていく。

「あんた・・・嘘だと思ってるでしょ」

「まさか。僕は見た目だけで人を好きにならないからね」

「・・・・・・」

「僕の血は君の為だけに流れてるんだ。なんなら試してみる?」

カッターを握った岩下の手に そっと自分の手を重ねる。

ぐさっ、と来るかと思ったけど来なかった。

冷たい表情のまま 僕の行動を見ている。

岩下の手ごと カッターを僕の頬にあてる。

「僕の二枚目な顔を傷つけるのは嫌なんだけど・・・」

「じゃあ、やめなさいよ」

「やめない。やらないと岩下は信じないだろうから」

静かにその手を引くと 頬が熱くかんじられた。

驚いた岩下の表情を見るのは これが初めてかもしれない。

そりゃ驚くよね。

僕は濡れた頬を手で拭った。

手には緑色の液体がついている。

「あんた・・・人間じゃないの?」

「関係ないよ、そんなこと。今は・・・この血は岩下の為だけにあるんだから・・・」

緑に染まった手を岩下の頬へ添える。

すでに彼女は いつも通りの冷たい表情に戻っていた。

でも、僕には・・・いつもと違うように見える。

 

「いつか、殺してやるわ」

「うん。覚悟して待ってる」

 

岩下の唇は氷みたいに冷たいんだな・・・なんて、僕は思ってた。

 

STORY 6:荒井 昭二
〜 僕は絶対に・・・ 〜

 

「・・・・・・・・・」

ここからは 事務室が丸見え・・・。

「・・・・・・・・・」

でも 僕には覗きの趣味はないですから。

さっさと場所をかえましょう。

「・・・・・・・・・」

林から抜け出て 学校へと戻る。

せっかく あそこは僕のいい精神集中の場だったのに。

「・・・・・・・・・」

あんなものが見えたんじゃ せっかくの清浄な霊の集まる場所も勿体ない。

「・・・・・・・・・」

しつこいですねぇ・・・・。

僕は学校の裏門の前で 『彼女』 に言った。

「どうやら僕にも『愛』だの『恋』だの言わせたいらしいですけど」

実際 口にして改めて感じた。

やっぱり 『彼女』 はいる。

「あの集まりに寄せられた霊ですか?それとも、もともと学校にいた霊ですか?

・・・とりあえず、僕には無駄ですよ」

裏門を潜ってから、もう一度言った。

「何の利益にもならない事はやめなさい。

成仏したかったら、お寺にでも行くといいでしょう」

 

STORY 7:※※※※※※
〜 学校であった不思議な話 〜

 

なんの利益にもならない・・・ですってぇっ?」

なんなのっ!?あの男はぁぁ!!

幽体のまま ふわふわと学校の屋上へと昇っていく。

「あたしだって・・・こんな怖い学校にカップルなんて作りたくないわよ!

でも仕方ないじゃない!仕事なんだからさぁ!!」

それにしても、どーしよう・・・。

あと1人『矢』を射さないと任務失敗になっちゃうんだけどな・・・。

だからって 全然見ず知らずの人間を射つのはプライドが許さないし・・・。

その時 あたしの足もと・・・つまり校庭にいた男子生徒に目がいった!!

たしか・・・あれって『新聞部の部長』よね。

「すっごく おもしろくなりそーじゃないっ??」

あたしは空間の間から『矢』と『弓』を取り出し 命中率100%を誇る腕前を発揮した。

ビンゴ!!

『矢』は見事 男の額に突き刺さってる!!

もちろんだけど この矢は人間には見えないわよ。

「あとは この男が誰を好きになるかね。

・・・『矢』の刺さった“仲間”を好きになるはずだけど・・・!!」

誰、まではあたしのレベルじゃ指定できない。

個人的には、この行く末を見てたいけど・・・任務終終了後は即撤退。ってのが

規則だしねー。

「ま、今度 休みの時にでも様子を見にこよっと★」



その後の、その後の学校であった怖い話 第八話へ続く・・・>>



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