Harm Of Will
 
If there's a froubador washing
It is he
If there's a man about town
It is he
If there's one to be sought
It is he
If there are nine shes
They are bought for me
 
This way is as is she
And he placed her unclothed longlegged
On top of the family free
 
And if he has chosen the point while she is
under him
Then leave her coily placed crouched sucking him
For it is I
Whith her on knee
 
I leave her without pith or feel
And leave her be
Leave it be for he controls what there'll be
He makes his face known to none
For if he is seen then all will
And all will know
Know me
 

リズミカルなボールの音。音にまとわりつく感じがする不規則なスピード。
あと少しというところで彼女は飛び、ボールをゴールに放り込む。だが・・・。

どんっ。

鈍い音を立てて、ボールがゴールより少し左に落下する。
「・・・ハァ、ハァ、ハァ」
これで何度目になるだろうか。 息を切らしている少女――倉田恵美は恨めしそうにゴールを睨んだ。
(もうちょっとだったのに!あぁ、これで明後日のテストまでに間に合うのかな?)
そんなちょっとした不安が胸をよぎる。 彼女は遅くまで残り、体育の実技テストの課題であるレイアップの練習をしていたのだ。 元々運動が得意ではない恵美は今日のように遅くまで残り、課題内容の練習をしていたのだ。 そのおかげで、何度、好成績を残せたのだろう。
「私・・・もしかしてバスケの才能が無いのかも」
そうつぶやいたのにもちゃんとした根拠があった。 なぜか彼女、バスケ関係の実技試験に関してはすべて思わぬ結果が待っていたのだ。 前回のディフェンスの試験のときは勢い余って壁に激突してしまったのだ。しかも顔面を強打したのである。
中学の頃に至っては、試合中に足を捻ることが多々あったのだ。 ここまでバスケットで運の無い人間はなかなかいない。
しかし、こんなことで挫けてしまっては元も子もない。歯を食いしばり、何度も頬を叩いてみる。
「しっかりしろ、恵美!もう時間は無いんだぞ!!」
ちょっと腫れるが恵美にはそんなことを気にしている余裕は無かった。
さっそく恵美は再びボールを手に取り、レイアップの練習に取り掛かる――

「お前、肩に力を入れすぎ。そんなんだからはずすんだよ」
突然、彼女の聞き覚えのある声が入り口から発せられた。
あまりのタイミングに、またも恵美はゴールを逃す。
声の元を見ると、そこには少し不良っぽい感じのする男子生徒がいた。

「し、新堂さん!何でこんなところにいるんですか?!」
新堂誠――そう呼ばれた男はしっかりとした口調で言い返した。
「ん?田所の霊がいるか調査しようと思ってな」
「嘘つき」
「バレたか・・・。本当は、単なる暇つぶしにバスケでもやっていこうかと思ってよ。 そしたらお前が練習してたって訳だ。でもよ、そんなひどいレイアップ見てたら誰だって注意したくなるだろ?」
「そこまで言わなくてもいいじゃないですか。そりゃあ、私はバスケ苦手ですけど・・・」
「そりゃそうだ。顔に『私、バスケが怖いんですぅ』って書いてあるもんな」
「なっ!?」
図星を突かれたものの持つ翳りと明るい笑い声が場の空気に溶け込んでいく。
「で、お前は今日はいつまで残っているんだよ。もう7時だぜ?」
「・・・納得いくまで」
その表情に、ただならぬものを新堂は感じていた。その気持ちを察していたのだ。 何せ、もう付き合い始めて早4ヶ月。内、恋人として過ごしたのが1ヶ月半といったところか。
普通なら、そんな短期間で親密になれると思わないだろう。 しかし、どこぞの女生徒が言っていた台詞は、まんざら嘘ではなかったのだ。「恋に落ちる時間なんて無いに等しい」のだと。
そんな二人である。どことなく何を言いたいのか感づいているのだろう。少し苦めの沈黙が二人を包み込み始めていた。 正直言って、この空気に耐えるほうが難しい。

「時間が少ないもんな」
沈黙を破ったのは新堂の方であった。その様子から倉田が今、どんな気持ちなのか何となく読めたようである。
「俺、荒井みたくスラスラと人の考えてること言えるわけじゃねぇけどよ。何となく匂いっていうのかな。 そんなんでわかっちまうんだよ。だからよ、そんなに思いつめるな。逆に、今日明日休んだ方がいいかもな」
あ。
わずかに恵美は、そう漏らしてしまった。それと同時に、恋人同士の意思疎通能力のすごさに驚いているようだ。
「あっさり荒井さんを引き合いに出しましたね」
「今くらいタメ口でいようぜ。邪魔者はいないしな」
「そう・・・よね。考えたら私たち、恋人同士だよね」
しかし・・・そんな恵美には不安があった。来学期から二人は遠距離恋愛をせざるをえないからだ。
新堂の方はいざ知らず、恵美は父の転勤によりスウェーデンの方で暮らさなければならないのだ。 おそらく新堂は、行き先までは知らなくても、恵美が遠くに行くという予感がしていたのではないだろうか。 それも、年が明けると同時に。

「ねぇ」
「ん、どうした?」
「私、さ。まだ"誠"って呼ぶ根性無いんだ。ごめんね。新堂さんのままでいい?」
「お前なぁ」
半ば呆れた口調で文句をもらす。
「それでね、新堂さん。私――」
「それ以上言うな」
そう言って言葉を遮った後、おもむろに恵美の唇を塞いだ。軽いキス。ほのかに甘く、柔らかい感触。
「明日に、してくれないか。眠れなくなるのは嫌だかんな」
恵美の方を向かず、体育館の時計に向かって台詞を吐く新堂。その顔はひどく赤かった。
「わかった。その代わり、明日聞いて眠れなくなったら承知しないからね」
少し口を尖らせながらも頼もしく思う恵美であった。時刻は9時を過ぎていた。
少し普通の恋人のような時間を過ごしたあと、二人は帰ることにした。 恵美は着替えなければならないので、新堂は玄関で恵美を待つことにした。

 
新堂が玄関についたときである。そこに、見覚えのある人影があった。陰気な雰囲気の男子生徒が闇夜の月をバックに玄関に佇む。
「・・・やっぱり居やがったか、荒井」
そう。そこにいたのは荒井昭二。新堂にとっては油断ならない相手である。
「そう冷たいことを言わないでくださいよ。それよりいいんですか?もし倉田さんが悪霊にでも襲われたら・・・」
「それは無い。ていうかよぉ、変に動揺誘うような言い方やめろよ。動揺した心覗いてそんなに楽しいか?」
「ふふっ、そうですね」
やけに楽しそうな口調で荒井は言う。彼には生まれつきエンパスという読心術を心得ていた。 その能力のせいで、学校生活はおろか、社会生活でも鬱積した生活を送らざるを得ない状況に陥っている。
もっとも、彼は人の心を楽しむというひとつの方法を編み出したが。
「で、事実は確かめてないようですけど・・・何となくわかったんですか?」
「ああ。でも、わかりたくないって言うのが本音かもな」
「普通はそうですよ。僕だって、その事実を聞いたときは嫌な思いをしましたから」
その一言に、新堂は少しだけ荒井に親近感を覚えた。こんな奴でも人間なんだと。
「さて、僕はそろそろ帰りますね。ちゃんと倉田さんを守ってくださいね、未来のナイト様」
少し少女漫画を彷彿とさせるような捨て台詞を吐き、荒井はそそくさと帰っていった。その姿はまるで黒子のようである。
「・・・ったく。相変わらず嫌な奴だぜ」

その5分後、新堂は、ちゃんと恵美を家まで送っていった。
勿論、倉田が転校するという話題を避けて。
願わくば、この二人が一つとなり世界となることを願う。

− To be continued −
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