鶴の恩返し -蜜月時-
昔々、あるところによひょう(真田泰明)という男がおりました。 この男は大変腹黒く、利用できるものはとことん利用するというとんでもない男でした。 しかし、その甘いマスクと善人のふりが好評で知っている人間はとてもよく思っていた そうな。 この男は家が村のずっと外れにあるのとあまり仕事をしなくても暮らしていけるので、 村のものとの面識はあまりありません。 そんなよひょうのとある奇跡をこれから語りましょう。 きっとハンカチの用意は…いりません。 ある冬の日、よひょうが山へ芝刈に出かけていたときのことです。 「ふんぎゃあ、ふんぎゃあ…。」 どこからともなく赤子の鳴声が聞こえるではありませんか!! (オイオイ、こんな時期に捨て子かよ。いくら俺でも酷いと思うぞ。拾ってあとで寺に 渡しておこう。) さて、そう思ったら即実行。泣声のする方へ向かいました。 しばらく歩くと茣蓙と蓑がありました。どうやら泣声はここから聞こえるようです。 (こんなんじゃあ子供が死ぬって。ったく…。) 果たしてどのような子が蓑の中で泣いているのでしょうか? 覗いてみると確かに赤子(風間)がおりました。ただ、妙に顔が大人びています。 違う意味での身の危険を感じたよひょうは見なかった事にしましたとさ。 めでたしめでたし……というわけにはいきません。 まだタイトルと同じ話が進んでませんね。 無駄足をくったよひょうは、ほとほりが冷めるまでとりあえず森の近くを散歩すること にしました。 あんな物体を見たら誰だって嫌ですね。 少しばかり吹雪いてきた頃、よひょうは一羽の鶴を発見しました。 その鶴は可愛そうな事にトラバサミに引っかかっていました。 これは大変と思ったのかよひょうはさっそく鶴のそばによりました。 どうやらトラバサミは予想よりは食い込んでおらず、これなら人間の手でも取れそう です。 (なかなか締まっているな…これは今晩のおかずにちょうどいいな…。) コラコラコラ…。こいつは鶴を喰おうとしてるようです。 その欲望が見事に目の色に現れています。 野生のカンでその危険を感じた鶴は少し暴れました。 やっぱり喰われたくありません。 「コラ、暴れるなって。すぐとってやるから。」 だからあんたに怯えてるんだって、その鶴は。 そんなことはお構いなしによひょうは鶴の戒めを解いてやりました。 その刹那、鶴は速攻で空の彼方へ飛んでいきました。 (今晩のオカズが…ま、いっか。山奥で達者に暮らせよ。) 残念がらないだけまだ善しとしましょう。 こうしてよひょうの一日は終わりを告げようとしてました。 その晩、よひょうには妙な胸騒ぎがしました。あの鶴のことを考えていたのです。 (あの鶴、結構年をとっていたなぁ。また引っかかってなければいいんだけど…。) なんだかんだ言って心配していたようです。 やはりよひょうにも動物愛護精神があるのでしょうか? そう思った矢先― こんこん。 突然家の戸を叩く音が。 (もしかしたら迷い人か?もしそうなら村までの道でも教えよう。じゃないと食糧が減っ てしまう) 瞬時に計算を終えたよひょうは返事をして戸を開けた。 そこには一人の女性(前田和子)が立っていた。 年齢で言えば大体50代前半だろうか。少々気が強い面持ちで、白い着物を着ている。 気の強い女将には見えるが、お世辞にも綺麗とは言いがたい。 だが、よひょうは違った___ (う、美しい!!!) どこをどう見たらそうなるのでしょう。 どうやら少々熟れ過ぎた女性が好みのようです。 「すみません。よひょうさんですか?」 優しい笑みを浮かべて女性は問い掛けてきました。 どうでもいいけど彼女の服が白装束に見えるのは気のせいでしょうか? 「あ、はい。そうですけど…。」 よほど好みなのか頬を赤めながらよひょうは答えました。 「実は…一度村であなたを見かけたんです。そのときに私の気持ちは……。」 まるで初々しいカップルのように見つめあう二人。端から見ると不気味です。 「あ、あの………僕のお嫁さんになっていただけますか!?」 「ええっ、良いんですか!?でも、あなたはまだ若いし…。」 「別にかまいません。あなたのような美しい女性、見たことありません。」 「美しいだなんてそんな…。」 「お願いします!!僕と一緒に暮らしてください!!!」 「…わかりました。あなたがよろしいのであれば死ぬまでご一緒させていただきます。」 こうして世にも不釣合いな夫婦が誕生しました。 嫁の名前はつうと言いました。なんでも北の国から来たとか。 そんなつうとよひょうは周りから羨ましがられるほどのおしどり夫婦と評判でした。 だが、幸せはそう簡単に続きません。食料が少なくなっていったのです。 つうの元気な姿を見たいよひょうはいつも自分の食事を減らし、その分をつうの方に 分けました。 しかし、そんなドンドン痩せ衰えていくよひょうを快く思うつうじゃありません。 (早く恩返しをして彼を安心させてやらないと…。) 果たして、つうの真意とは…。 「あんた、あんた。」 「ン?どうした…オイ!!どうしたんだ!!少し顔が青いぞ!!!」 確かにつうの顔は少しばかり疲労の色が出ていました。 しかしつうはそんなことを感じさせないように努めて笑顔でいます。 「夜な夜な私は機を織っていたんです。きっと良い値で買ってくれるでしょう。 これを売って食料を買って、あなたのおなかを満たしてください…。」 「だけどつう、お前はどうするんだ?少し食べないとつらいぞ?」 「私のことは心配しないで。さあ、早く。」 そう言って無理矢理反物を渡しました。 それは見事なまでに美しい反物で、売れば大金が入るのは当たり前のような優雅さが漂 っています。 正直言ってよひょうはためらっていました。 確かにこれを売ればかなりの額のお金が入ります。 しかし、今の彼にとっては生活費うんぬんよりつうの体が心配でした。 「しかし、本当にいいのか?もしお前が…。」 「私はあなたに幸せになって欲しいの!!」 思わずよひょうはつうの顔を見つめてしまいました。 しばらく甘く緊張した空気が二人を包み込みます。 その沈黙を破ったのはよひょうでした。 「反物なんて明日でも売りにいけるさ。それよりも…今宵はお前と蜜月というものを味 わいたい。」 「あなた…。」 こうして二人は一晩中時間を惜しむように愛する事の確認を行ないました。                                 次のページへ・・・


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